第12回年会報告

日本ケミカルバイオロジー学会第12回年会は、2017年6月7日から9日の3日間、北海道大学クラーク会館にて開催されました。日本ケミカルバイオロジー学会としては、北海道地区での初めての開催でありましたが、460名の方々にご参加いただけましたこと、厚く御礼申し上げます。
   アカデミア創薬が強く期待される現状において、生物系アッセイ・イメージング・創薬化学と統合的な研究開発が重要となってきており、その中心にケミカルバイオロジー領域は位置するものと言えます。今回の第12回大会では、さらにアカデミア創薬でコスト面からも重要となる効率的な創薬開発に必須のSBDD(Structure-Based Drug Design, 立体構造を基盤とする合理的設計)に着目し、創薬基礎研究を大学と企業の立場の両面から取り上げると同時に、創薬・ケミカルバイオロジー研究等に対する放射光施設の最新技術や統合的物理化学解析技術と今後の展望、さらに最先端クライオ電子顕微鏡解析技術を含む構造生物学研究を取り上げ、海外及び国内から先生方の講演をいただきました。

I-01 蛋白質相互作用の熱力学解析と創薬
○津本浩平1,2,3,4)、長門石曉1,2,3) 1)東大工学系、2)東大医科研、3)東大創薬機構、4)医薬基盤・健康・栄養研
I-02 タンパク質結晶構造解析の自動化に向けて
千田俊哉 高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所
I-03 Cryo-EM Structure of the TRP channel PC2 involved in Polycystic Kidney
Disease Mariana Grieben1,5), Ashley C W Pike1,5), Chitra A Shintre1,5), Elisa Venturi2),
Sam El-Ajouz2), Annamaria Tessitore1), Leela Shrestha1), Shubhashish Mukhopadhyay1),
Pravin Mahajan1,4), Rod Chalk1), Nicola A Burgess-Brown1), Rebecca Sitsapesan2),
○Juha T Huiskonen3), Elisabeth P Carpenter1)
1)Structural Genomics Consortium, University of Oxford, Oxford, UK, 2)Department of
Pharmacology, University of Oxford, Oxford, UK, 3)Oxford Particle Imaging Centre,
Division of Structural Biology, Wellcome Trust Centre for Human Genetics, University
of Oxford, Oxford, UK
I-04スルホンアミド抗がん剤によるスプライシングファクターCAPERαの選択的分解誘導
○上原泰介1)、箕嶋幸範1)、相根康司1)、畑直子1)、三橋薫1)、山本昇1)、神山洋1)、高橋健太郎1)、小竹良彦1)、木村麻依1)、横井晃1)、井上篤1)、馬渕美雪2)、田中明人2)、大和隆志1)
1)エーザイ株式会社、2)兵庫医療大学薬学部
I-05生体に用いるイメージング薬剤の開発
小川美香子 北海道大学 大学院薬学研究院 生体分析化学研究室
I-06細胞競合を利用した新規がん予防的治療薬の開発
藤田恭之 北海道大学 遺伝子病制御研究所
I-07糖鎖の合成と生物機能解析
深瀬浩一 大阪大学大学院理学研究科
I-08骨格構造が類似した天然物の集中的生合成法の開発
及川英秋 北海道大学大学院理学研究院化学部門

ポスター発表においては、スライド1枚/1分間でのプレゼンテーションで概略を理解してから、ポスター前での熱気溢れるディスカッションが行われました。
   また、審査委員の先生方のご協力により、優秀な若手発表者X名にポスター賞が授与されました。さらに、英国王立化学会(RSC)からの厚いご助力によりRSCMolecularBiosystemsポスター賞を2名に授与いただきました。

[RSC・Organic & Biomolecular ポスター賞](敬称略)
・山下博子(東京大学大学院分子細胞生物学研究所)
  「神経変性疾患関連凝集タンパク質分解誘導剤の開発」
[RSC・Chemical Communications ポスター賞](敬称略)
・小林大貴(理化学研究所)
  「ワールブルグ効果を制御する化合物の同定と作用機序解析」
[ポスター賞](敬称略)
・山次健三(東京大学大学院薬学系研究科)
  「内在性ヒストンに直接的かつ残基選択的に翻訳後修飾を導入する人工触媒」
・高橋大輝(東北大学大学院生命科学研究科)
  「オートファジーによる細胞内分子の選択的分解」
・児玉亜有実(名古屋大学理学研究科)
  「環状RNAを用いた終わりのない回転式翻訳によるタンパク質合成の効率化」

今回の年会はケミカルバイオロジー学会に構造生物学の視点を加える試みましたが、参加者の方々の積極的かつ有意義なディスカッションを通じて、異分野交流を促進することができたのではと感じております。改めて参加者の皆様に感謝申し上げます。最後に、多くのご支援とご高配を賜りました賛助企業の関係者の皆様に、厚く御礼を申し上げます。